〜地球から脱出するまでの日々の記録〜

2014/05/02

昔のブーツを磨いて人生について気が付いたこと



お気に入りの福島にある輸入古着屋さんで

彼を見つけた。


一目惚れ。



マーチンのブーツ。
イギリスで初期の初期に作られていたものらしく。
見たことのない形。
ほしいデザインがないと思っていたとこまさに理想なデザイン
履いてみると、あらやだぴったり。
即購入。
すぐに履き替えた。
初めてかも、かなりいい感じ。
ただ、履いていると、

誰かに踏まれたり
突如の雨にさらされたり
見る見るうちに元気を失っていった。
いつも履きたいのだけど履けば履くほど汚れっていってしまう。
せっかくの出会いを台無しにしてしまう。
そう思うと履いていてもなんだか申し訳ない気持ちで歩いていた。




そんな中で商店街にある靴屋さんにふと入った。
店長のおねえさんは靴磨きが好きだと言っていた。



あ、と思う。





そして日を改めてお店に訪れる。





『靴磨き教えてください!!』


(ズザアッ!!)


おねえさんはご飯中だったが中断して靴磨きレッスンを開始してくれた。



数分後、




にゃんとワンダフル。






おねえさんが磨いてくれたのは下側(左足)の靴
革は我れ先にと輝きをあたりに散りばめる。



『先に靴の周りのふちから磨いていきます。
そうすれば靴の輪郭がはっきりしていきます。』

化粧と一緒、とおねえさんは付け加えた。
文化祭や結婚式の女装の際にしか
メイクしたことがない私だったが
変わっていく姿を見て終始うんうんうなずくばかり。



そしてもう一足に取りかかろうとするおねえさんに一言。











『僕に、やらせてください。』










『靴を...みがきたいんですッ...!!』







ということで私も磨かせてもらった。
磨いていると心が落ち着いてきて、意識が靴に入り込んでいく。












この靴は日本に渡ってくる前に
何十年も前に誰かの手によって産まれて
店頭に並んで買われて。
履かれて磨かれてまた履かれて。

その過去があって今ここにいる。
そして今自分がまた磨いている。
自分のあとにまた誰か履くのだろうか。
そう思った瞬間、点と点の間を線で繋げたような感覚を味わった。
それと同時に使命という文字が浮かんできた。




最近この感覚と似たような体験をした。
実家に帰った際に先祖について記録が残っているところまで親父と遡った。
六代ほどまで遡って共通していたのは『水』と『助』だった。
運命かのように先祖たちは海や川で溺れた人を救助していた。
『実は小さい頃、俺は海で誰も気付かないうちに落ちてしまって、
たまたま通りかかった人に助けてもらった』
じいさんたちが積んだ徳が回ってきたんだべな、と親父はぽそりと言葉を漏らした。


彼らがいて今の自分がいる
そして彼らの人を助けるスピリットが自分の血に流れている
歴史を辿るとそこにはやはり使命があった。

氏名は使命。

先祖からのメッセージとして受け取ると同時に
メッセージに値しない今の自分に怒りを覚える。
過去を歴史を自分で断ってはいけない





歴史を知り、それに触れることは、
自分が大きな流れの中にいるということを知る。
過去を引き継いで未来に渡していく使命があるということを知る。







買っては飽きてすぐにまた別なものを買う短期的サイクルでは
味わえない感動がある。
歴史だけはどんな一流デザイナーでも今すぐ作ることはできないから。
何年もの時の洗練を受けたモノや私たちにしかないものがあるから。







すっかり見違えるようになった靴を履いて
すこし長い散歩をした。

いつのまにか日は暮れ、夜になっていた。

靴は外灯の光を反射させて

夜空に浮かぶ星のように

何年も前の輝きを

今を生きる私の顔を明るく照らしていた。











『どうすか!お客さんも、ひと磨き!!』





special thanks!!
石巻商店街 REGAL SHOES 新柵ねえさんへ